こんにちは、北カリフォルニアの会議通訳者、翻訳・通訳会社 EJ EXPERT代表のブラッドリー純子です。
東京では、弊社が翻訳・通訳業務を承っているクライアント企業のCEOに同行し、10社以上を2.5日間で訪問して会議をしてきました。
バイタリティに溢れ、やり手CEOとして有名な方なので覚悟はしていましたが、
着いたばかりなのに時差ボケもなくサクサクと会議をこなしていく姿には圧倒されました。
分刻みのスケジュールで企業から企業へとホッピング
高層階のザ・社長室にて会談なんてのも。
秘書が蓋つきのお茶を運んできて社長さんが
「まあまあ、どうぞ」とすすめる、
絵にかいたようなシチュエーション。
アポ訪問した先には弊社がお世話になっているクライアント企業もあったので、撮影許可をいただいて記念に。
会社によって社員も雰囲気もそれぞれカラーが違って面白いです。
会議通訳の職場といえば、会社の会議室かホテル会場とかコンベンションセンターがメインです。
が、リピーターのクライアント企業の幹部に同行し、会食をする機会も結構多くあります。
私の場合、アメリカでも日本でも一流ホテル内のレストランが多いです。自分じゃ滅多に行かないようなお店です^^;
よってこの仕事をしていると自然と舌が肥えてくるかもしれません。
もちろん、油断していると身体まで…
東京に到着した日の夕方は、赤坂の全日空ホテルで会食。ロビーにはビジネスで来日している外国人が多い。
海外暮らしには嬉しい懐石料理です。
あ、でも仕事でしたね
(画像は全日空ホテルの日本料理 雲海のサイトよりお借りしています)
9品目でてくるコースで個室も広く、景観も素晴らしかった。
といっても見とれている暇はなかったですが。
献立の通訳を頼まれたらどうしよう、日本語でもよくわからんし…とか思っていたら
仲居さんはどうやら英語を話す様子
じゃあ、
越前 香箱蟹さばき 外子 内子
子持ち鮎月ケ瀬煮
栗の百合根金団茶巾・揚げ銀杏松葉さし
とやらも英語で説明してくれるかしら、と期待していたら
そこまでは対応していないらしく、そそくさとどこかへ行ってしまいました (T▽T;)
会食のお相手である某大手企業の会長さんは比較的古い業界に新しい風を吹かせたことで有名な方。
こちら側のCEOともグローバルな話題で会話も弾みます。
経済界のちょっと複雑な話も出たりするので集中力が要ります。
懐石のお料理がなかなか減らない私に、同行していた若手社員の方がとても気を利かせてくださり、
小声で 「今のうちにどうぞ食べてください」
と言って
まず自分の発言を英語で話し、同じ内容を日本語で話すという
ひとり通訳
をしてくださいました
やっぱり、涙ながらに残すのは私のポリシーに反するので
お気遣いに甘えて
すべて完食させていただきました
若いのに外国からきた通訳のおばちゃんにもこんな配慮ができるなんて
彼の出世は間違いなし!
って、私に太鼓判押されてもって感じでしょうけどね(笑)
【VIPとの会食通訳で気をつけたいこと 11】
① 普段から世界の政治経済に注目しておく
大物であればあるほど、ハイレベルなトピックがボンボン飛び出してきます。せめて単語だけでも訳せるようにしておきます。
普段からニュースや新聞で世界情況について勉強しておきましょう。
② コースじゃない時はメニューからサッと自分の注文を決める
通訳が何を食べるか迷っている暇はありません。できればお店に入る前に事前になんとなく決めておくとよいと思います。
③ 選択股があるなら、食べやすいものを注文する
食べたいものではなく、食べやすいものを頼みましょう。両手がふさがったり、食べるのに時間がかかるような面倒な料理は頼まない。
通訳は話している時間がほとんどなので、時短で食べれるようなメニューなら最適です。
④ ノートを取る場合は目立たないように
いきなり大きなレポート用紙をテーブルに出して・・・というのはスマートではないですよね。私はこんな時のために小型のノートパッドを買い置きしています。卓上には出さず、膝元でノートを取りながら訳出します。
⑤ 途中で席を立たなくてもいいように、お手洗いは済ませておく
通訳が席を立ってしまうと会食も一旦ストップしてしまいます。なるべく途中で行かなくてもよいように、事前に済ませておきたいものです。
⑥ お酒をすすめられたら、口をつける程度にしておく
飲めない人はお断りすべきですが、飲める人であればすすめられた場合は少量であれば構わないと私は思います。私はどうせなら仕事が終わってから飲みたいので、乾杯の時にちょっと嗜む程度にします。
あ、でもよく冗談で「美味しいワインを飲むと通訳スキルがアップします」と伝えています(笑)。
⑦ 通訳はサービス業、終始笑顔を忘れずに
弊社の通訳者を見てみても、リピーターがつくのは好感度が高い方。いつもワークショップや講座でもお伝えしていますが、通訳はしょせんサービス業。どんなに技術がよくても人として好かれない方にはお客様がつきません。
気が利いて社交的で笑顔が素敵なら「またあの方にお願いします」と言っていただけるはず。
⑧ TPOに合わせて、プロフェッショナルな服装をしていくこと
見落としがちだけど大事な部分です。悲しいかな、初対面の数分間でその人の第一印象は決まってしまうそうです。だから服装や見かけも大事。会議通訳者はそれなりに高い報酬をいただいて仕事をするわけですから、派遣する側としてもきちんとした服装で行って欲しいというのが本音です。
VIPとの会食通訳であればなおのこと。高価なものを身に着ける必要はないですが、パッと見て安物とわかるような素材は避けたほうがよいと思います。
⑨ あまりお腹を空かせた状態で行かない
ギリギリまで会議が入っていたり、他の現場から駆け付けた時など、どうしても食事が取れなかったりということもあります。私はそういう時にちょっとつまめるようにシリアルバーなんかをバッグに入れています。
ガッつかなくて済むように、かつ出された料理はいただけるように調整が難しいところですよね。あくまで通訳業務を全うすることが使命ですから。
そういう私も、カンファレンスで午後からの業務なのに早めに到着して仕出しのお弁当を食べていたら、同僚から「図々しすぎ!」とダメ出しされたことがあります 反省~。
⑩ メニューはウェブサイトなので下調べしておく
会食で使うようなレベルのお店ならウェブサイトにメニューが出ていることが多いです。調理方法や素材についても必要であれば事前に勉強しておくと良いでしょう。小さなメモ帳に対訳で単語リストを書き込んで持参すると便利。
⑪ クライアントには2度お礼を言うこと
クライアント(またはエンドクライアント)は別に払いたくもない通訳の食事代を払ってくださるわけです。お店を出た後に「ご馳走様でした」だけでは十分ではありません。必ず後でメールか文書できちんとお礼を伝えること。エージェントを通している場合は、クライアントにお礼を伝えてもらうとよいでしょう。
そういう細かい気づかいも通訳者には必要です。
通訳者によってマイルールは違うかもしれませんが、私の経験から言えるのは以上です。
あとは、緊張せずにせっかくの美味しい料理と会話を存分に楽しむことだと思います。
会食は当事者同士にとって友好の場。大抵の場合、フレンドリーな雰囲気で皆さん会話を楽しまれます。
クライアントだって、堅苦しくて愛想のない通訳者より、明るくて楽しい通訳者に来てもらいたいと思っています。
実際に弊社にも「あの○○さん、あの人は楽しくっていいね。次もあの方でお願いしますよ。」という指名があったことも。
VIP通訳は、大企業の経営者や今をときめく起業家の話をオフレコで聞ける滅多とないチャンスでもあります。
私は彼らの話を通訳をしながら、
多いに学び、インスピレーションを受けることができるのです
行きと帰りはなるべく地下鉄で通勤。